こんにちは!やす(@YasLovesTech)です。久しぶりの個別解説記事になります。今週は本当に忙しい一週間になりましたね。その火種?となった一因は8月31日のZoom(ズーム)のウルトラ決算です。決算については他の方のブログや動画が詳しいと思うので、概要に触れる程度でそちらに任せるとして、今回はなぜZoom(ズーム)が勝ったのかというところを深掘りしていこうと思います。動画も上げてますので、チャンネル登録・いいねは本当に嬉しいです!
今回の記事は私の分析というより、なぜZoom(ズーム)が勝ったかという英語の記事を徹底的に読んで、私が総評としてまとめたものです。参考資料は一番したにあります。
Zoom(ズーム)の決算はこちらにあるので投資を検討される方は一読をお勧めします
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ZOOM(ズーム)異次元決算!
Zoom(ズーム)の決算を語るには、もはやこのスライド一枚で十分と言っても過言ではありません。Q1も+169%で驚き決算でしたが、2020年Q2はそれをはるかにうわまるYtoY355%成長という異次元決算を出してきました。もちろん、アナリストの予測を大きく上回る数字で文句なしです。これを受けて、株価も一時は+40%も上昇するなど大きく反応しました。なお、その後はナスダック崩壊により大幅に株価を落としています。
この辺りの決算の内容は、アキさん(@aki35orz )が詳しく解説してくれてるので、そちらのノートを紹介させていただきます。
ちなみに、コロナ禍で特需があっただけで伸びたという指摘もあるかもしれませんが、 競合はそれほど恩恵を受けていません。
よく引き合いに出されるMicrosoftですが、同社はTeamsというコラボレーションツールに非常に力を入れており、コロナ後もビデオ関連のアップデートはよくニュースに出てましたが、TeamsがバンドルされてるOffice365の成長率(YtoY)が20%から15%と特需にもかかわらず成長率を落としてます。また、主にカスタマーサポート向けに似たようなソリューションを提供しているRingCentralもQ1->Q2、33%成長->29%とこちらも特需を掴み切れてません。GoogleやCiscoも同様のプロダクトを出してますが、プロダクト毎の詳細はなく実際の数字は分かりませんが、どちらもQ2の決算はYtoYで減収、減益になっています。
これだけリモートワークの需要が吹いてる中控えめに言っても、Zoom以外の企業がYtoYを伸ばせなかったのは大敗北。Zoomの単独勝利!独走!と言っても過言ではないでしょう。
いや、周りはTeamsを使ってる!Teams・Google Meetsの方が使いやすいという方がいますが、それは主観でしかありません。数字を見る限りリモートワークの追い風をうまくつかめずYtoYが減速する一方で、355%の成長を叩きつけるのは、もはや競合は大敗北!こっぱ微塵です。信長に首を取られた今川義元以上の敗北です。Teams, Google Meetsの方が成長するという数字はミリも残ってないのが現状です。
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Zoom(ズーム)独り勝ちの理由
では、なぜZoom(ズーム)は独り勝ちできたのかという点について深掘りしていきます。
・圧倒的な技術力と品質!
・徹底的な顧客志向・使いやすいUI/UX
・無料でも充実した機能
・スピードがとにかく早い
・初めからレッドオーシャン上等
・Winners Take ALL
こちらは、もともと昨日呟いた内容をさらにブラッシュアップしたものになります。
圧倒的な技術力と品質!
まずは、技術力の観点です。こちらは従来言われてた通りです。 Zoom(ズーム)は動画通信において独自の圧縮技術(コーデック)を持っており、通信中に40%のパケットロスが発生しても安定的に動くとのことです。これはコーデックだけでなく、世界中で運用しているサーバーも上手に使ってるみたいです。詳細は省きます。
Zoom could operate even at 40% data loss, so it would still work on a spotty or slow internet connection.
「Zoomはたとえデータが40%欠損しても動く。不安定で遅いネット環境でも十分に動く」
https://www.forbes.com/sites/alexkonrad/2019/04/19/zoom-zoom-zoom-the-exclusive-inside-story-of-the-new-billionaire-behind-techs-hottest-ipo/#5df7cc264af1
また、CEOのEricはCiscoに買収される前からWebEXというビデオコール用のソフトウェアを開発している会社に在籍し、VP(Vice President)という肩書でエンジニアチームを率いてましたが、Ciscoに2007年に買収され2011年にCiscoを退社してZoomを立ち上げるときに、同WebEX社から40人も彼についてきてZoomを立ち上げたとのことです。こういった背景を持っている会社は技術力本当に強いですね。
ただ、この点に関しては皆様の指摘がある通り、データの蓄積などによる優位性があまりなく、あくまでも圧縮技術なため、特許があるとはいえ、GAFAMなどが本気を出したら技術的にはすぐ追いつけるものだろうというのが懸念としてありました。 そして、私も同様の不安があり、Q2の決算が出るまではZoomは競合に巻き込まれるなと考えパスしてました。
Zoom(ズーム)の技術力が強いとはいえ、GAFAMが技術的においつてるのはおそらく本当でしょう。色々なレビューサイトなどを見る限り競合製品のレビューは総じていいです。Zoom(ズーム)の強さは技術力以外にあるみたいです。それらをさらに深掘りしていきます。
徹底的な顧客志向・使いやすいUI/UX
この点に関しては、どの記事を読んでもCEOのEricは創業当時から顧客志向であることが書いてあります。そもそもCisco社を退社したのもの、WebEXの顧客の満足度が低く、それに対してCisco社が真剣に向き合わなかったことが原因ととある記事では書いてます。
Zoom CEO, Eric Yuan, is so committed to creating a customer-centric culture that he spends up to 70% of his time personally engaging with the video conferencing vendor’s customers. Mr. Yuan says he prioritizes nurturing existing customers above searching for new ones and that this commitment is integral to Zoom’s success. In practical terms, Mr. Yuan has built a culture that values customer engagement above sales quotas and long-term customer growth above securing new business.
Data Source : https://blog.totango.com/2019/05/the-ultimate-guide-to-creating-a-customer-centric-culture-fc/
また、これは2020年5月に書かれた記事の引用ですが、Zoom(ズーム)のCEOのEric氏は時間の70%も顧客と向き合うために使っているとのことです。カルチャーとして、新規顧客を獲得するのではなく、既存のお客さんの満足度を高めることが長期的に成功するという企業文化を大事にしてるみたいです。
We have a relentless focus on making the best product with the best user experience. This is ultimately what every customer wants. Toward this end, we spend much of our time listening to customers and fine-tuning our software to fit their needs.
「我々は良い体験のためのプロダクトに徹底的にフォーカスしてる。かなりの多くの時間を顧客の意見を聞き、顧客のニーズに合うように合わせている」
Ultimately, we do not want to grow too fast. Our philosophy is we really focus on making our existing customer happy. We do not aggressively pursue the new prospect. Also, we always prioritize the features requested by our existing customers … We truly believe if you do not make the existing customer happy, even if you get more new prospects, it may not be sustainable.
「我々は急成長するのではなく、既存の顧客の満足度に集中している。新しい機能なども追うものではない。常に顧客のニーズの優先度に応じて機能を提供している。もし、既存の顧客を満足させられなければ、たとえ新しい機能がヒットしてもそれは安定的な’成長にはならない」
Data Source : https://www.drift.com/blog/how-zoom-grew/
本当に、顧客のことを第一に考えてる記述が多く見られます。確かに、あまり意識はしたことがないですが、Zoom(ズーム)のUI/UXはほんとに直感的にわかるし、シンプルで使いやすいですよね。「神は細部に宿る」と言ったものです。こういう姿勢が細かいUI/UXも使いやすいものにし、コロナ禍においてもいち早く市場が求めている製品を投入できたのではないでしょうか?TwitterではZoomが座席を変えられる、上座機能を導入したと盛り上がってますが、これもZoom(ズーム)が顧客のニーズを本当に細かく聞いているからでしょう。
無料でも充実した機能
Freemium — Zoom has always had a freemium model. While freemium isn’t as rare in enterprise communications anymore, it’s still the exception. Zoom’s free version isn’t missing key features either. Free users have access to the same features that paid users have, with meetings restricted to 40 minutes. That’s long enough for short meetings, but embarrassing and frustrating on traditional one-hour meetings. The pandemic has forced many people to try online meetings for the first time, so no-cost trials are attractive.
(黄色部分のみ)Zoomは無料でも主要な機能は十分に使える
Data Source : https://www.nojitter.com/video-collaboration-av/6-reasons-why-zoom-winning-video-race
こちらは本当に当たり前のことなんですが、Zoom(ズーム)は他のSaaSモデルと同じようにフリーミアムの形をとっています。すなわち、ちょっとだけ試すのは無料ということです。しかし、Zoom(ズーム)は比較的他のSaaSと比べ無料の範囲が極めて広いです。ほとんどのユースケースにおいて無料だけで十分足りるのではないかというほど無料で機能を提供しています。唯一の無料の大きな制限は40分までしか使えないということですが、これもほとんどのケースで事足りると思います。
We make our freemium product work so well. We give most of our features for free and one-to-one is no limitation. That’s why almost every day there are so many users coming to our website, free users. If they like our product, very soon they are going to pay for the subscription.
Data Source :https://www.drift.com/blog/how-zoom-grew/
Eric「無料でかなりの機能を提供しているからこそ、毎日新しいユーザーがZoomを訪れ、もし彼ら・彼女らがプロダクトを好きになってくれれば、すぐお金を支払ってくれるだろう」
いやーほんとかっこいいですね!しれば知るほどZoom社の強さがわかるような気がします。
スピードがとにかく早い
I don’t know of any other company that can respond as quickly as Zoom. Even if it’s a disaster of its own making, Zoom responds quickly and appropriately.
Data Source : https://www.nojitter.com/video-collaboration-av/6-reasons-why-zoom-winning-video-race
私は、あまり歴史を知りませんが、Zoomはとにかく機能開発と投入が早いとのことです。確かに、今年の3,4月くらいにセキュリティ問題で少し話題になった時も5月にはKeybaseというセキュリティの会社を買収し、直ちに問題を鎮静化しました。
また、今回のコロナ禍を機に、Zoom Phoneという機能を急速に押し進めてます。これは、仕組みはどうなるか分かりませんが、普通にZoomではなく電話をかけたらシームレスにZoomのビデオコールに移行できるというもので、電話とZoomビデオの垣根をなくすものです。これらも既存のお客さんからの声を聞いてコロナ禍に対応するために猛スピードで対応している一例になります。
上述もしましたが、社長自身が顧客の声をよく聞き、そして企業全体のカルチャーも顧客の意見を最重要視する。そして、それを反映した機能の投下は誰よりも早い。こういう戦いはGAFAMのように資本力で戦いをする企業にとって一番厄介な戦い方なのは間違いないでしょう。GAFAMの一部門では到底勝ち目はないと思います。
初めからレッドオーシャン上等
そもそも、Zoomの競合環境が厳しいのは今に始まったことではありません。Zoomを創業した2011年から、すでにSkype, WebEx, Google Hangoutなど競合がたくさんいて、たくさんの有名どころのVCでさえも、Zoomへの投資をパスしたとの話が残ってます。当時は皆に無謀な挑戦と言われていたみたいです。
It’s extremely crowded, but the potential is huge. If our product is better than any others, we can survive.
「非常に競合環境が厳しい。けど、潜在マーケットは非常に大きい。もし、我々のプロダクトが他より優れていれば生き残れる」
Data Source: https://www.drift.com/blog/how-zoom-grew/
ほんと、Ericさんの言葉1つ1つがめっちゃかっこいいですよね。Zoomは初めから顧客第一主義、誰よりも猛スピードで機能を投入し、たくさんいる競合に打ち勝ってここまでやってきました。そもそもこの競争を勝ち抜いてきた時点でZoomの異常な競争力に疑いを持つべきではなかったのではないでしょうか? もはや、競合に負けるかもと考えること自体がこの会社のことを何も知らず恥ずかしいことだったなと思います.
Winners Take ALL
「 Winners Take All」これは勝者が市場を総取りするという趣旨の言葉ですが、Zoomはすでにこの領域に入っていると思います。
Zoomは徹底して、全てのユーザーが簡単にすぐに使えることに拘っています。今のZoomの認知度からしたら友達の誰かしらはすでにZoomを使っており、Zoomを知らない人でもダウンロードさせられる、使わせられる状態になっています。
Product placement — Product placement sells. It used to be a big deal to have branded phones appear in popular television shows (Cisco in West Wing, Mitel is Boston Law, etc.). This year, it’s about the logos powering television interviews. I haven’t done any statistical analysis, but I see Zoom a lot. And, they often call the solution Zoom even when it’s not.
Data Source : https://www.nojitter.com/video-collaboration-av/6-reasons-why-zoom-winning-video-race
また、メディアやオンラインイベントでのZoomの使用も増えてきているので、これらのPlacement効果( 露出効果 )はかなりのものになるでしょう。
すでに、ビデオ会議といえばZoomというブランドが確立しつつあって、マーケティング的に非常に優位に立ってるのは間違い無いでしょう。この状況下から、技術的に・製品的にちょっといいくらいのプロダクトがマーケティングで押し勝つのもかなり難しい状況になってきてます。ましてや、相手はWebEXの経験を持ってかつ顧客の話を聞きまくり、最速で機能を投下してくるチームです。もはやこのビデオ会議ツールとしてのZoomの地位はしばらくは揺るがないものになったでしょう。
まとめ・やすの方針
今回は非常に長い記事になりましたね。月曜日の好決算を受けて思わずZoomを大量購入してしまい、果たしてこのまま持ち続けていいものかと思いZoomの強さを調べていくうちにこんなに長い調査になってしまいました。
やすの方針としては、記事を読めば読むほど、ZoomそしてCEOの考え方が非常に魅力だなと考えてます。このようなオーソドックスな機能を提供する会社において、顧客の意見に集中する会社は本当に強いでしょう。GAFAMでは本当に勝ち目がありません。
また、財務情報もさらっと見ましたが申し分ないです。細かい部分はありつつも大きな自信になってるのは2点です。
Zoomの急成長を支えているのは、今は北米ではなく世界展開です。それが売上の31%も占め、その成長率はYtoYで629%に上ります。北米だけでなく、全世界のインフラとなりつつZoomの入り口と考えてます。
Zoomの2020Q3ガイダンス:$685M – $690M
アナリストの平均: $692M
アキさんが非常に良い指摘をしてくれました。Zoomの2020Q2の売り上げは$664Mです。ほとんどがサブスクリプションの売上と考えると、流石にガイダンスもコンセンサスも低すぎるかなという印象を持ってます。QtoQ3.9%程度で、アナリストの予想を超えていき、直近のQtoQは102%。確かに、多少成長のスピードが減速したとしても流石に3.9%まで落ちることはないかなと思います。かなり高い確率でガイダンスも予想も超えていくのかなと考えてます。
最後に割高かどうかが一番気になりますが、私はこちらを見て判断してます。
結論としては、やすとしては珍しく保有15%近くまで保持しています。相場感次第になりますが、基本的にここから先相場が悪くならなければこのままの保有率を維持しようかなと考えてます。
今後もよろしくお願いします
ここまで読んでいただきありがとうございます。やすブログでは、テックニュースやテック株の解説記事を引き続き書いて行こうと思います。
最後に、投資はあくまでも自己責任でお願いします。今後も良い記事を書いていきたいので、引き続き応援よろしくお願いします。
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ブログを読んでいただきありがとうございます。
当ブログは無料ですが、サポートをいただけると非常に嬉しいです。おまけ程度ですがコンテンツも用意しましたので楽しんでもらえれば^^
Comments
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[…] こちらも何度も書きますが、すでにPelotonはソーシャル・ライブ・フィットネスの領域で目に見えない運用アセットをかなり貯めています。技術的に、ハード的に追いつくことはできても、こう言った運用アセットを超えるのは数年レベルの時間がかかります。CEOが何より、昔からソーシャルを中心にユーザー体験を作り上げてきているので、GAFAMの一部門程度が追いつくのはほぼ不可能と考える方が自然です。技術・ハードで追いついてもユーザー体験で追いつけないのです。これは先日のZoomの記事と似たような話ですね。 […]