こんにちはやす(@Yasushi_1985)です。投資すれば必ず成功すると言われている「Andreessen Horowitz(以下、a16z)」が個人ストレージのシェアリングエコノミーであるNeighbor.comに約11億円の投資をしたと1月31日に発表しました。(公表されているデータを見る限りa16zと数人の個人の投資のようなので、ほぼ11億円全額、a16zによる投資ということが伺えます)。このNeighbor.comに投資したこと自体も大きなニュースでしたが、そのあとにa16zが出したブログが非常に興味深いものでしたので今回はそれの解説記事になります。
Investing in Neighbor(a16z.com)
今回、紹介させていただくブログはこちらです。
Investing in Neighbor(a16z.com)
a16zはブログやPodcastなどで、シリコンバレーのトレンドやスタートアップに関する記事などを定期的に発信しており非常に勉強になります。英語になりますが、ぜひ原文を読んでみてください
まとめ
- a16zがストレージのP2PサービスのNeighbor.comに11億の投資
- 悪いのはアイデアではなくタイミングだ
- a16zの共同創業者も99年にクラウドサービスを初めて失敗した
- Facebook, Google, eBayなどもタイミングが適切だった
- ストレージのP2Pサービス「Neighbor.com」も今が適切なタイミング
悪いのはアイデアではなくタイミングだ
a16zの共同創業者であるBen Horowitzは1999年にクラウドサーバーサービスである「LoudCloud」を開始しました。今でこそクラウドサーバーはAmazon, Google, Microsoftなどが巨額の売上をあげています。ですが、当時はハードウェアもネットワークも十分なものではなく、商業的に成り立たせるのは難しく「LoudCloud」はネットワークのオペレーションシステムにpivotしました。まさにBenのアイディア自体は良かったのですがタイミングが重要ということは彼自身の経験に基づくものなのです。他にもこのような例は下記の画像のようにたくさんあります。今でこそ大企業のGoogle, Facebookですが、確かにこの2社が創業した時はすでに先駆者がおりユーザーベースや資金量からすると不利な地点からのスタートでした。ですが、結果はこの2社より前に始めたサービス(MySpace, Inforseekなど)は最終的は買収されて検索エンジン、SNSのマーケットから退場しています。
P2PストレージサービスであるNeighbor.comが約11億円を調達
Utah’s Neighbor.com Raises $10M In A16z-Led Series A To Be The ‘Airbnb Of Storage’
今回、そのタイミング説に従ってa16zが投資したのが、P2PストレージサービスであるNeighbor.comです。仕組みはいたって簡単で空き部屋やガレージなどスペースが余っている個人が月額ベースでストレージを貸し出す仕組みです。実はこのアイディア自体は、新しいものではなくすでに、Clutter, MakeSpace, and Troveなどがすでにこの領域に進出しており、資金も数十億円レベルですでに調達してます。また、Sharespaceのように米国外でもこのアイディアは多く実現されています。競争相手は、Neighbor.comと同じアイディアで挑むスタートアップだけではなく、既存のストレージサービスも大きな競合になります。
一見するとすでに競合も多く、アイディアもユニークなものではなく、技術的にも差別化が難しそうなエリアです。私も投資家としてNeighhbor.comを考えた場合、上記のような理由からおそらく投資は難しいだろうなと考えますし、他の投資家も同様に考えると思います。では、なぜ a16zはNeighbor.comに投資したのでしょうか?
なぜa16zはNeighbor.comに投資したのか?
では、a16zはなぜNeighbor.comに投資したのでしょうか?ブログで理由を以下のように述べています。
- マーケットは非常にサプライ側の問題が大きい。既存のストレージサービスは急成長しており値段が高くなり、安い場合も非常に不便な場所になってきている
- Neighborはその状況において、圧倒的に安く・近い場所にストレージを提供することが可能になった。また、それは既存のストレージよりも安全に保管できる
- Neighborのチームは非常に優秀で、ホスト側と使用者側のUI/UXが非常に優れている
- すでにユタ州で行われたβテストもユーザーからの評価が非常に高く。直近の他都市展開(ロサンゼルスなど)も成功している
1、2がa16zの説の中心の説となります。既存のストレージサービスの値段が徐々に上昇し、それにともない既存のストレージサービスは安い地を求めてどんどん遠く・不便な場所に移動していきました。ストレージマーケットは供給側の制約を大きく受けるマーケットになったのです。それこそがまさにa16zが目をつけたタイミングであり、かつては存在しなかったユーザー側がもっと安く・近場のストレージを求めているタイミングということです。
最後にポエム
いかがでしょうか?私もNeighbor.comの投資をみたときに、今更P2Pストレージサービス?と疑問に思いましたが、ブログを見ると色々と面白い点が見えてきました。以下、ブログには書かれてない私自身の考察を書いていきます
パブリックストレージの価格上昇のタイミング
予想になりますが、Airbnbなどシェアリングエコノミーが流行った2010年代前半。世の中の色々なものがP2Pでシェアされるようになりましたが、多くの失敗も残しています。失敗の代表例の1つに、そもそも価格が安いものをシェアリングエコノミー化しようとしたというものがあります。このモデルの重要な点に供給側が儲かるビジネスモデルあることが重要です。既存のストレージサービスもおそらく当時は価格が安く提供されており、わざわざ個人の家のガレージや部屋で借りるというマーケットエコノミーが成り立たなかったのでは?と予想しています。2020年現在、シリコンバレーの3mx3m四方の既存ストレージサービスと、Neighbor.comの価格は以下の通りです
- 既存ストレージサービス:$240前後/月
- Neighbor.com:$50前後/月
確かにこの価格差であれば、十分にマーケットエコノミーが成り立つのではないかと思われます。おそらく2010年代前半はパブリックストレージの値段がもっと安く($150?)、供給量も多くシェアリングエコノミーが今より成り立ちにくい状況だったのではないかと思います。なお、競合のClutter, MakeSpaceなどは集荷・配送などの付加価値も提供しているため値段がパブリックストレージに近しい価格になっています。なので、値段的にもNeighbor.comが優位に立てそうです
ユーザーもスタートアップもシェアエコノミーに非常に慣れてきた
この点からも非常にタイミングが良いと感じます。アメリカでは少なくともAirbnbやUberなどのシェアリングエコノミーを使用するユーザーがだいぶ浸透してきており、個人の何かを借りるという文化の敷居がかなり低くなったという点が挙げられます。
また、スタートアップ側もシェリングエコノミーのビジネスをする際のユーザーとホストのトラブルのノウハウや、どうUI/UXを作るかなどのノウハウを持った人材がAirbnbやUberを経て2周目、3週目に入ってきているという点も有利に働いていそうです。
今後もよろしくお願いします
ここまで読んでいただきありがとうございます。今後も良い記事を書いていきたいので、SNSなどで拡散など応援いただけると非常に励みになります。Twitterのフォローやシリコンバレーの情報をお届けするメルマガ登録などよろしくお願いします。
Comments