こんにちはやす(@Yasushi_1985)です。先日、StreamlabsとNewzooから2019年のゲームストリーミングに関するレポートが出ましたのでそれの解説記事になります。昨年末に、FortniteのストリーミングでNo1視聴数を誇るNinjyaがTwitchからMixerに電撃移籍を受けて話題になりました。移籍金は22億円〜33億円と言われています。Ninjyaに続き、Shroud(私の一番好きなストリーマーです^^), CouRageJD, Disguised Toastなど次々と有名プレイヤーがTwitchからMixer, Youtube, Facebookなどに移籍しています。ゲームストリーミングの世界ではAmazon(Twitch), Google(Youtube), Microsoft(Mixer), Facebook(Facebook Gaming)が札束による有名選手の取り合いの様相をしています。今日はそのゲームストリーミングについて解説していこうと思います(タイトルの都合上GAFAと書きましたが、正しくはGAFAではなくGAFMですね。Appleは今の所ゲームストリーミングからは一歩引いています)。
Streamlabs & Newzoo Q4 Year in Review Live Streaming Industry Report
1月中旬にStreamlabsとNewzooから非常に興味深いレポートが出ましたので敬意を表しまず最初に紹介させていただきます
Streamlabs & Newzoo Q4 Year in Review Live Streaming Industry Report
Streamlabsはあまり詳しくないのですが、世界中でゲーム配信者が使っているツールという認識をしています。かなり使われてるので多くのデータを持ってるんですね。Newzooはゲームに特化したデータプロバイダーです。私もよくNewzooのデータを見ます。本レポートも英語ですがそれほど難しくないので、よろしければ本家のレポートもぜひ見てみてください。
また、補足的に1月9日付のVentureBeatの記事
Facebook Gaming grows 210% in 2019 as it battles Twitch, YouTube
も紹介させていただきます
本ブログの画像は全て上記のいずれかのレポートからの引用になります
まとめ
- ゲームストリーミング全体の視聴数は2018年、2019年12月比較で12%成長
- Twitchが引き続きシェア1位(61%)を維持するものの、シェア・視聴数は減少
- 2位はYoutubeGaming(27.9%)、3位はFacebookGaming(8.5%)、4位はMixer(2.6%)。それぞれ視聴数、シェアを伸ばしておりTwitch一人負けが続く
- Facebookの伸びは大きく2020年に勢力図が変わる可能性もあり。Youtubeも強い
- Mixerは伸びているもののやや苦戦気味
- Twitchがハードコアタイトル中心で、Youtubeは比較的アジア向け&カジュアルタイトルが多め
- 鉄板配信タイトルはLeague of Legend, Fortniteの二強
プラットフォーム比較
ゲームストリーミング全体の伸び率
2018年12月 : 10.6億時間
2019年12月:11.9億時間 ( 12%成長 )
今月頭のVenture Beatの記事で2018年の12月、2019年の12月の視聴時間の伸びを公開してます。億時間と言われてももはやピンときませんが重要なのはゲームストリーミングサービスは年率おおよそ12%で成長しています。ただ伸び率に寄与したのはFacebook Gamingによる影響ともいえそうで、SNSを基盤として持っているプラットフォームがストリーミングを開始すれば大きくマーケットが伸びることが期待されます
ゲームストリーミングのシェアの変化
1位:Twitch ( 68% -> 61%) *Amazon
2位:Youtube Gaming ( 27.5% -> 27.9% ) *Google
3位:Facebook Gaming ( 3.1% -> 8.5% )
4位:Mixer ( 2,0% -> 2.6%) *Microsoft
こちらは2018年と2019年のマーケットシェアの比較によります。Venturebeatの記事によればTwitchの一人負けが続いている状況で、Youtube, Facebook, Mixerはそれぞれシェアを拡大しています。特にFacebook Gamingの伸びは大きくこのままの成長を続ければゲームストリーミング勢力図は2020年に大きく変わる可能性があります。また、NinjyaやShroudの獲得などニュースは話題になったMicrosoft Mixerですが現時点では伸び悩んでいる印象は否めないです。
こちらが、Streamlabs & Newzooによる合計視聴時間と合計配信時間(プラットフォームの配信者が配信した合計配信時間)の比較です。このチャートからは面白い傾向が見えてきます。合計視聴時間を合計配信時間で割ると配信1時間あたりに得られる視聴時間(配信効率)が算出できます
配信効率:配信1時間あたりに得られる視聴時間
Twitch : 9668.6M/359.8M = 26.8時間
Youtube Gaming : 2884.8M/48.2M = 59.8時間
Mixer : 357.1/80.3 = 4.44時間
見て明らかな通り、Youtube Gamingは配信者からみて一番効率の良いプラットフォームといえます。Mixerは新規配信者にとってはなかなか難しい状況が想像できます。NinjyaやShroudのように多額の移籍金で移った配信者は一定の収入が期待できるから良いのですが、今後Mixerがどう新規配信者を獲得していくかが課題になりそうです。また、FacebookGamingが急伸したのもおそらく配信効率の高さからでしょう。すでにFacebookという大規模ユーザーを抱えているプラットフォームにゲーム配信プラットフォームを提供したので、配信者にとって効率の良いプラットフォームになっている可能性が高いです。今後、何もベースを持たない新規配信者はFacebookで始めるのが一番効率が良いかもしれません。
Twitch
続いてプラットフォーム別に見ていきます。まずはTwitchです。
合計視聴時間
合計配信時間
ゲームタイトル別
Twitchは合計視聴時間も、合計配信時間(ストリーマーによる実際配信した時間の合計)も減少傾向にあり、特に配信時間の方は2019年Q1をピークに減少しておりストリーマーのTwitch離れが伺えます。
タイトル別にみると、League of LegendやFortniteなど鉄板タイトルが上位にありつつもGTA V(grand theft auto 5)、CS:GO、World of Warcraftなどハードコアかつ少し年齢層が高めなタイトルが中心なのが伺えます。
Youtube Gaming
続いてYoutube Gamingです
合計視聴時間
合計配信時間
ゲームタイトル別
Youtube Gamingの視聴時間合計は2019年から緩やかに上昇傾向ですが、2019年Q4に大きく伸びています。さらに興味深いことに配信時間合計はそれほど大きく変わってないので、前述の配信効率が大きく向上してます。おそらく、プラットフォーム内のアルゴリズムなどの変化や季節的にゲーム以外のユーザーがYoutubeプラットフォームに流入した結果ゲーム視聴時間も増えたなどの理由が想像できそうです。
またタイトル別にみると、こちらも同じくFortnite, League of Legend の鉄板タイトルが上位にいますが、PUBGおよびPUBGモバイルが上位にきているのも興味深いトレンドです。想像ですが、Youtubeはアジアでの影響力がTwitchより強いのでアジアで人気のPUBGがYoutubeで上位に出てきたのではないかと想像してます。また、Minecraftが上位にいるのも興味深いです。Minecraftは小学生〜中学生くらいがメインのターゲットなのでYoutubeはTwitchに比べアジア地域が多い、カジュアル・20歳未満ユーザーが多いという特徴が伺えます。この点から考えても今後はYoutube Gamingが徐々にTwitchに追いついていくのではないかと想像してます
Mixer
続いてMixerです
合計視聴時間
合計配信時間
ゲームタイトル別
Mixerは厳しい状況が伺えます。2019年Q3に、おそらくNinjya移籍のタイミングかと思われますが注目を浴びた影響で一気に配信時間が増えていますが、先述した通り配信効率がTwitchやYoutube Gamingに比べかなり悪いので、合計配信時間も配信時間も2019Q4に減少しているのがわかります。視聴者数はともかく配信時間がQ4という盛り上がる時期に落ちるのは少し気になります。プラットフォームとしてもともと大きなユーザーを抱えていないMixer(Mixerの前身はBeamという配信プラットフォームを買収した)は機能面などで差別化を図っていく必要がありそうです。
タイトル別にみると、Forniteを得意とするNinjya、PUBG, Apex, CoD Mobileを得意とするShroudなど多額のお金を支払って獲得した配信者の影響が強く出てそうです。鉄板タイトルであるLeague of Legendがトップにランクインしてないのも鑑みるとゲームタイトルが獲得した配信者依存になっていることが伺えます。
最後にポエム
いかがでしょうか?ゲーム配信プラットフォームは2010年代の前半にTwitch以外にも色々なゲームストリーミングプラットフォームがありましたが、2020年に入りGAFMに集約されつつあります。特に今後はYoutube, Facebookが徐々に拡大していくのではないかと思います。ここから先は記事ではなく個人的なポエムを記させてください。
なぜGAFMはゲームストリーミング?
なぜテックジャイアントはこれほどゲームストリーミングに投資を続けているのでしょうか?様々な理由がありますが、シリコンバレーの現場の声を聞く限り私個人は以下のように考えてます
1 : ストリーミングの先にあるクラウドゲーミングプラットフォーム
2 : XR時代を迎え3Dの技術や経験が今後の成長を左右する。現時点でこのアセットをGAFMは誰も有してなくゲームデベロッパーに蓄積されている
1つ目の理由は、AppleStore, Google Playのようにゲームプラットフォームは巨額の収益基盤になります。今後、ネットワーク技術が向上すればクラウドゲーミングの時代も到来する可能性が大いにあります。その時に向けてまずは基盤となるゲームストリーミングのプラットフォームを抑える必要があると考えてます。実際にGoogleはクラウドゲーミングサービスStadiaを開始しました。
2つ目の理由は、シリコンバレーの有名XR投資家が語ってくれた以前教えてくれたストーリーです。このままいけばARグラスを中心としたXRの体験が2030年の中心のテクノロジーになる可能性は大いにあります。その時に必要な技術や経験値はGoogleやFacebookが得意としてきたデータではなくゲームデベロッパーが得意としてきた3Dの知識が必要になります。来たるXR時代に迎え、GAFMもこの技術と経験値を抑えに行く動きが加速しているとのことです。その流れの一つでゲームエコシステムの中心であるゲームストリーミングプラットフォームを抑えにきてると考えたます。現に、FacebookはVR/ARデバイスに力を入れてますしGoogle、Amazonも自社ゲームスタジオの流れを加速しています
今後はカジュアル x モバイル
Youtube Gamingが急伸した背景にあるように、今後はカジュアル x モバイルタイトルがゲームストリーミングの中心になってくると考えてます。現に、PUBG Mobileはその流れを大きく加速しましたし、昨年末に発売されたCall of Duty Mobileも2ヶ月で1億7200万DLとかつてのPCタイトルが多くモバイルに移ってきています。CoD : Mobileを配信している配信者も多くいます。また、Riot GamesもLeague of Legend Mobile, EAもApex Legend Mobileをそれぞれ発表しています。これらのタイトルがリリースされれば視聴者もプレイヤーもモバイルに大きく加速していくことでしょう。ゲームストリーミングプラットフォームも、モバイルユーザー向けに体験を追求したプラットフォームが後の勝者になっていくことが予想されています
日本でも有名配信者の奪い合い
すでに欧米のプラットフォームで起きている有名配信者の奪い合いですが、これは現在日本でも起きていることです。昨年、Mildomという中国系の動画配信プラットフォームが日本でサービスを開始しましたが、開始とともに次々と有名配信者がなぜかMildomの配信を始めてます。噂ですが、数百万から数千万円レベルの移籍金を多額に払ってMildomプラットフォームに配信者を集めているという噂もあります。ただ、Mixerと同じように無理やり配信者が移籍しても視聴者が全員ついていくことはなく、こういった配信者の奪い合いがどれだけ続くかは個人的には懐疑的です。ユーザー目線では全くないので、いちゲーム視聴者ファンとしてこういった配信者の囲い込みはあまりやってほしくないなぁと考えてます
今後もよろしくお願いします
ここまで読んでいただきありがとうございます。今後も良い記事を書いていきたいので、SNSなどで拡散など応援いただけると非常に励みになります。Twitterのフォローやシリコンバレーの情報をお届けするメルマガ登録などよろしくお願いします。
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